Vol.16
Vol.16

 

 新入社員の3分の1が3年以内に退職〜増加する新入社員トラブル

  政府は2010年3月に大学・専門学校を卒業(中退も含む)した新社会人77.6万人のうち、56.9万人が正規雇用に就いたものの、3分の1にあたる19.9万人は「3年以内に辞める」と推計した。〜 3月19日 若者の雇用対策を考える「雇用戦略対話」より      

  
 大きな手間とコストを掛け、採用した新入社員が数年で辞めてしまいます。このように新入社員を定着させ、会社の戦力となるよう育成していくことの難しい時代に新入社員採用時のトラブルも増えています。

   ほとんどの採用時のトラブルは採用面接時に使用者が応募者に対して期待していた能力・勤務態度と現実の落差にあると思われます。応募者は、採用してもらう為に自分を良く見せようとするわけですから、自分の能力以上に自分の実績、能力をアピールすることになります。使用者が、そのアピールを真に受けて採用したところ、実際は全く仕事ができない、勤務態度が悪いなど期待との落差に驚き、トラブルになります。

  最近は、不況の影響もあってか、試用期間であっても容易に自分から退職しないケースが増えております。会社は試用期間中であるからといって、安易に解雇する場合がありますが、合理的な理由なく解雇することは出来ませんし、国からの各種助成金等の受給も出来なくなります。

 ●  試用期間を終えたが、こちらが期待するほどの能力がなかった。
  給料を下げることは可能か?

 試用期間中といえども、会社と社員との間には雇用契約が成立しています。雇用契約とは会社と社員との約束事であり、双方が合意しないと内容を変えることは出来ません。特に給料は、雇用契約のうちの重要な約束事の一つですから、いくら能力が低いといっても会社は社員の同意なく給料を下げることは出来ません。

  もし、給料を下げるのであれば、給料を変更する旨の合意書を作成し、サインしてもらう必要があります。

 ●  勤務開始後、身元保証と誓約書を提出することを拒否している。
  これを理由に解雇できるか?

  身元保証と誓約書を提出する義務は法律に定められていません。従って、会社が採用する際に、身元保証と誓約書を提出することを前提に採用したとしても、内容によっては社員も提出を拒むことが出来ます。例としては、「業務上生じた損害はすべて社員が負担するものとする」などという社員に負担の重い誓約書や身元保証は、提出を拒否できます。

 但し、「就業規則を遵守します」「在籍時は営業機密を第三者に漏洩しません」などの内容であれば、社員としての当然の義務を明記したものですので、拒否する正当な理由はありません。

 ●  採用時にトラブルが起きないようにするには、会社側は予めどのような点について気をつけるべきか?
 
 応募者の本来の能力や勤務態度が事前にわかれば、トラブルは相当程度防ぐことができます。特定の能力を前提に勤務させるのであれば、やはり実技試験を行うのが一番であると思います。実際に業務と同じレベルの仕事をさせることが一番能力を図るに適していると思われます。もちろん雇入れ通知書や雇用契約書を結び、労働条件を明確にし、無用なトラブルを防ぐことも重要です。


  残業代求め、法テラスを提訴 常勤弁護士

  独立行政法人・日本司法支援センター(法テラス、東京)が、常勤弁護士を労働基準法上の管理監督者(管理職)と見なして残業代を支払わないのは違法として、法テラス八戸法律事務所(青森県八戸市)の安達史郎弁護士(36)が、法テラスに超過勤務手当など約109万円の支払いを求める訴訟を八戸簡裁に起こしました。法テラスによると、所属弁護士が超過勤務手当を求めてテラスを訴えたのは全国で初めてで、安達弁護士は2010年1月の八戸事務所開設から今年3月末まで所長を務めていましたが、「実際には名ばかり管理職で、残業代が出ないのは実態にそぐわない」と主張しています。

  安達弁護士は「他の職員に対する労務管理の権限も皆無だった」として、常勤弁護士の労働時間は就業規則で1日7時間30分と規定されており、「実際には月約17時間の超過勤務があった」として、11年11月までの手当の支払いを求めましたが、法テラス側に「常勤弁護士は労基法上の管理職にあたり、支払う必要はない」と拒否されたということです。

 実際の管理監督者の定義としましては、@労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざる得ない重要な職務内容、責任と権限を有していること A現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないものであること B賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていることなどが挙げられます。このような問題は、労使双方の見解の違いが問題発生のはじまりだと思われますので、関係がこじれる前に十分なコミュニケーションが取られていなかったのでしょう。法律家である弁護士が労働者として訴訟を起こす時代になったということに驚きこのニュースを取り上げましたが、どこの企業や組織でもこのような問題が起こり得る可能性があることは認識しておかなければならないのかも知れません。 
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