Vol.6
Vol.6

「労使紛争解決への救済策」

昨今の急激な経済環境の変化を背景とする解雇、賃金不払いなどの個別労働紛争の増加に対し、主に2つの労働紛争解決の手段があります。個別労働紛争(労働関係における従業員と会社との間の紛争)について、解決のための行政のあっせん手続です。

個別労働紛争解決促進法に基づき、都道府県の労働局ごとに置かれる紛争調整委員会のあっせん(一部の都道府県労政主管部局の行うあっせん、労働組合においては、労働委員会の行うあっせんがあります)、もう一つは、迅速かつ的確な紛争解決を目的とした司法手続きとして、2006年4月より導入された労働審判制度があります。

同制度は、裁判官1名と労働関係の専門知識・経験を持った労働審判員2名で構成される労働審判委員会を地方裁判所に置き、調停による短期間での解決を試みるもので、調停が成立しない場合には、権利関係や労働審判手続きの経過を踏まえて、労働審判委員会で合議した解決案として労働審判が示されます。これに異議がなければ審判が確定し、裁判上の和解と同一の効カを持ち、異議が申立てられた場合には審判の効力は失効し、通常の訴訟手続きへ移行することになります。

まず、都道府県労働局によるあっせんは、平成10年の労働基準法改正により、都道府県労働基準局が労働条件について解決援助機能を持つこととなり、さらに、平成13年10月に成立した個別労働紛争解決促進法において、国が、都道府県労働局における相談・情報提供、都道府県労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんを行うものとされ、地方公共団体においても、都道府県労働委員会等により個別労働紛争のあっせん等の調整を行うことができるという制度が採用されました。

都道府県労働局では、労働問題に関する専門性を生かした無料の労働紛争解決援助サービスとして、@相談・情報提供A助言・指導Bあっせんという3つの制度を提供しています。紛争調整委員会によるあっせんは、弁護士、大学教授等の学識経験者である第三者が公平・中立な立場で紛争当事者の間に入り、当事者双方の主張の要点を確かめ、調整を行い、話し合いを促進することにより、円満な解決を図る制度です。委員会は、都道府県労働局ごとに設置されています。

あっせん申請書の提出申請は、紛争当事者である労働者および事業主の双方、労働者または事業主の一方のいずれからでも可能です。あっせんは、原則として紛争当事者の出席を求めて行われますが、紛争当事者の任意の合意に基礎を置くものであるため、出席は強制ではありません。期日については、紛争当事者の希望を考慮してあっせん委員が定めます。あっせん委員は、双方の主張を聞き、紛争当事者の話合いを促します。また、その中で、紛争当事者の一方または双方に譲歩を求めたり、具体的な解決の方策を打診したりして紛争の解決に努めます。場合によっては紛争の解決が見込めないと認めたときは、これを打ち切ります。

 司法による救済は、裁判所で行われる手続きである調停と労働審判があります。話合いによる解決を中心とした制度です。解決した場合、確定判決と同一の効力が得られる調停が成立した場合、調停調書が作成されます。この調書は裁判上の和解調書と同一の効力を持つものとされており、相手方が任意に合意内容を履行しない場合には強制執行により、権利の実現を図ることが可能となります。

労働審判はその対象事件が、労働契約の存否その他の労働関係に関する事項について「個々の労働者と事業者との間に生じた紛争」(労働審判法1条)に限定されています。労働審判は、各地の地方裁判所・支部で行われています。原則として3回以内の期日で審理を終了します。当事者間で調停が成立しない場合、原則として労働審判が行われます。労働審判に不服がある当事者は異議申立を行うことができ、この場合、手続きは訴訟に移行します(労働審判法21条,22条)。

 現状において労働紛争は身近になり、常に検討・対応していなくてはなりません。労働紛争が発生した場合、簡易救済として行われる制度として成立した制度ではありますが、発生を未然に防ぐ労務管理などの社内整備を整える必要があります。就業規則の整備、正しい給与計算のチェックなどは、専門家である社会保険労務士の相談を検討してください。

 算定基礎届(定時決定)とは

 被保険者の実際の給料と届出している給料との間に大きな差が出ないように、毎年1回、社会保険の等級の見直しを行うことを定時決定といいます。その定時決定を行うために提出する書類を算定基礎届といいます。算定基礎届の提出時期は7月1日から7月10日までの間に届出します。

 算定基礎届の注意点としましては、

・全被保険者の4月・5月・6月に支給された給料を届出します。末日締めで翌月10日に給料を支払う会社は4月10日・5月10日・6月10日に支給した給料金額を届出することになります。
・ 届出の対象は7月1日現在の全被保険者ですが、6月1日以降に被保険者となった人はその年の算定基礎届では対象外となります。
・ 支払基礎日数が17日未満の月は除外されます。有給休暇を取得した日は給料が支払われていますので、支払基礎日数に含まれます。
・ 現物支給(食事・住宅など)も標準価額により計算し記載して届出します。食事・住宅などを現物で支給する場合も労働の対償として受け取るものは、現物給与となり社会保険料の対象となります。食事や住宅でその費用の一部を社員が負担している場合は、標準価額と本人負担分との差額が現物給与となり社会保険料の対象となります。ただし、食事の場合は本人が標準価額の3分の2以上を負担している場合は現物給与にはなりません。

・パートタイマーの算定基礎届は、支払基礎日数により届出方法が異なります。支払基礎日数が17日以上の場合は通常通りの届出ですが、3ヶ月とも支払基礎日数が17日未満の場合は、15日以上の月を対象として算定します。例えば、15日以上17日未満が2ヶ月、15日未満が1ヶ月の場合は、15日未満の月を除いた2ヶ月間で算定します。 

事務所通信一覧に戻る
お問合せ
吉浦経営労務事務所
448−0813
愛知県刈谷市小垣江町
中伊勢山10−1
TEL:0566−24−1483
FAX:0566−24−1546