Vol.17
Vol.17

 みなし労働時間制とは、営業マンや新聞記者など、社外で働く者の労働時間を所定労働時間労働したものとみなすことをいいます。会社の外で働く営業社員のようなケースでは、実際、外で何時間仕事をしているかを正確に把握することができません。人によっては食事時間や公園で休んでいる時間が多い人もいるでしょう。しかし、会社はそれを知ることはできません。そこで、このような労働時間を正確に把握するのが難しい事業場外の仕事につく社員については、実際の労働時間にかかわらず、取り決めした時間を労働時間とみなすことを認めているのです。

  労働基準法第38条の2は、「労働者が労働時間の全部又は一部について事業場外で業務に従事した場合において、労働時間を算定し難いときは、所定労働時間労働したものとみなす。ただし、当該業務を遂行するためには通常所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合においては、当該業務に関しては、厚生労働省令で定めるところにより、当該業務の遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなす。」

 2.  前項ただし書の場合において、当該業務に関し、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定があるときは、その協定で定める時間を同項ただし書の当該業務の遂行に通常必要とされる時間とする。

 3.  使用者は、厚生労働省令で定めるところにより、前項の協定を行政官庁に届け出なければならない。

  適用基準としては…

 使用者の具体的な指揮監督が及ばず、労働時間を算定し難いと判断されるかによります。次のような場合は、事業場外で業務する場合であっても、使用者の具体的な指揮監督が及んでおり、労働時間の算定が可能であるので、適用しません。

@何人かのグループで業務につき、そのメンバーの中にグループリーダーなどがいて労働時間の把握ができる場合

A社外で業務に従事していても、携帯等で常時使用者の指揮命令を受けながら労働している場合

B社内で訪問先や帰社時刻等、当日の業務の具体的指示を受けたのち、社外で指示通りに業務に従事し、その後社内にもどる場合

  身近な問題として、営業職の社員への対応として、「営業手当」を固定の手当として支払う場合が多く見受けられます。みなし労働時間を採用したとき、適用した営業社員が、月30〜40時間の時間外労働をした場合、この時間に相当する額以上の営業手当が必要となります。

  裁判例からみても、営業手当に時間外割増が含まれていると主張するためには、手当が何時間分の割増賃金に相当するかが分かるように、営業手当のうち割増賃金相当部分とそれ以外の部分とを明確に区別することを要する、としています。

  よって営業手当の額を決定する際には、「営業社員が通常どのくらいの時間外労働をしているのか」をよく把握する必要があります。

  しかしながら、判例の判断基準からは、営業社員が、@毎朝朝礼に出席、A夕方や夜に帰社し、上司にその日の行動の報告書を提出し、掃除をする。Bホワイトボードへメモ程度とは言え、その日の行動計画を会社が把握している。C会社所有の携帯電話を持たせ指示している、もしくは常に労働時間の算定が可能な状態である。

  また最近では、社員をGPS機能での行動が把握できるなど、「会社が労働時間を算定することが困難である把握できない」とみなし労働時間制の適用を受けるには、少し難しい時代になりました。その際、効果的な労使協定、就業規則の条文明記、営業手当などのみなし労働時間制を採用する諸手当の記載は重要になります。ぜひ専門家にご相談ください。


 障害者の法定雇用率の引き上げについて               

 厚生労働省はこのほど、企業における障害者の法定雇用率を、平成25年4月1日から2.0%(現行1.8%)に引き上げることを決定し、6月20日に公布しました。障害者の社会進出をさらに促す狙いで、企業に達成が義務づけられている障害者雇用率は、上がることになりそうです。障害者雇用促進法は企業などに、全従業員にしめる障害者の割合を国が定める障害者雇用率以上にするよう義務づけています。
 

「障害者の雇用の促進等に関する法律」では、事業主に対して、その雇用する労働者に占める身体障害者・知的障害者の割合が一定率(法定雇用率)以上になるよう義務づけています(精神障害者についての雇用義務はありませんが、雇用した場合は身体障害者・知的障害者を雇用したものとみなされます)。
 

 また平成22年7月から、常用雇用労働者が201人以上の事業主、続いて平成27年4月から、常用雇用労働者が101人以上の事業主が障害者雇用納付金制度の対象に拡大される予定となっています。それに加え、短時間労働者も(週所定労働時間20時間以上30時間未満)が障害者雇用率制度の対象となっています(一人当たり0.5人と数えます)。

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